今日から使えるビジネス心理学
『ピグマリオン効果』で良好な人間関係を構築するコツを伝授。
逆に『ゴーレム効果』を与えないように注意してください。
子供を育てる上で、「褒めて伸ばす」といった方法がありますよね。
これと同じように、人から期待されることで能力が向上する心理学が、「ピグマリオン効果」です。
ピグマリオン効果は、教師が生徒に活用する教育心理学として知られていますが、社内で上司が部下に活用することにより、理想的な関係を構築できる方法としても知られています。
そこで今回は、ビジネスにおけるコミュニケーション術としてのピグマリオン効果について、わかりやすくまとめました。
- 部下と円滑なコミュニケーションが図りたい
- 新人を上手に育成したい
このようにお考えの方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

ピグマリオン効果とは
ギリシャ神話に登場する彫刻家の名前が由来となった「ピグマリオン効果」は、わかりやすく一言で説明すると、期待することで成果につながる教育心理学です。
先生が生徒に期待する、上司が部下に期待するといったピグマリオン効果を活用することにより、コミュニケーションの円滑化ができたり、新人育成に役だったりします。

信じてくれる人の期待を裏切りたくない

期待してくれる人の気持ちに応えたい
このように考える心理と向上心が生まれることで、ビジネスに成果を生み出し、なおかつ上司と部下の理想的な関係を構築できる、一石二鳥の効果が期待できます。

ピグマリオン効果を使った実験
教育心理学として、学校や職場で用いられることが多いピグマリオン効果ですが、実験法について一部の学者たちからは、否定的な意見がありました。
その実際に行われた実験が、1964年にサンフランシスコの小学校で行われたものです。
ウィキペディアでも詳しく解説されていますが、子供たちに「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名付けた一般的な知能テストを行い、担任教師には「今後数ヶ月間で成績が向上する生徒を見極める知能テスト」だと、説明したんですね。
その後、成績関係なく無作為に選んだ生徒を選出し、担任教師に名簿を見せたところ、その生徒達は驚くことに成績が向上しました。
担任教師の脳裏に、一部の生徒の名前を印象づけることにより、自然と期待が生まれて、その期待を生徒達も感じ取り応える形になったと、推測されます。
まさに、期待されることで伸びるピグマリオン効果の再現です。
しかし、担任教師は無作為に選んだ生徒の名簿をざっと見ただけで、名前は覚えていなかった事実が後に発覚しました。
このような理由から、ピグマリオン効果の再現性は低いと、専門家たちに指摘される形となったんですね。
この実験結果を見るかぎりでは、ピグマリオン効果と心理の因果関係を完全に証明するのは、難しいかもしれません。
ただし、ピグマリオン効果はネズミによる実験も行われています。
こちらに関しても、ピグマリオン効果は実証されているため、教育心理学において有効であるといった見方が根強くあるのも確かです。
職場で有効なピグマリオン効果の具体的な方法
ここからは、人材育成と上司と部下の円滑なコミュニケーションに有効な、ピグマリオン効果を最大限生かすための具体的な方法を、ご紹介していきましょう。
方法① 判断を任せる
ピグマリオン効果を生かすためには、部下に上司から「信用されている」「期待されている」といった認識を、強く持たせなければいけません。
そのため、最終的な判断をあえて任せることにより、口先だけでなく本当に期待されていると、部下に信じ込ませることができます。
途中で口を挟んだり、最終的な決定権が上司にあったりすると、期待されている感覚が薄れてしまうため、まずは部下の裁量に委ねる上司の決断力が必要です。
方法② 言葉でしっかりと褒める
人は、言葉で褒められることにより、期待されていることを初めて強く認識することができます。

言葉で伝えなくても態度でわかるだろう
このようなニュアンスでは、上司の考えをしっかりと部下に伝えることができません。
- 君なら大丈夫だ
- 期待しているから頑張れ
- 信用して任せるよ
このような褒め言葉を、口に出して直接褒めてあげることにより、ピグマリオン効果が生かされ、人材育成と円滑なコミュニケーションにつながります。
方法③ 達成できる目標を与える
人の能力は、必ずしも一定ではありません。
得意なこともあれば、不得意なこともあるのが人間です。
ビジネスにおいても、仕事内容によって高い能力を発揮できる人もいれば、発揮できない人も存在するんですね。
個人の能力を見極め、達成できる目標を与えてあげることで、自信と能力向上につながります。
低い壁を何度も乗り越えるところから始めていけば、やがて高い壁も乗り越えられるようになるでしょう。
まずは、部下一人ひとりの能力を見極め、達成できる可能性が高い目標を、わかりやすく与えてあげてください。
方法④ 大きな期待をかけすぎない
ピグマリオン効果は、期待することによって伸ばすことができる教育心理学ですが、過度な期待をかけすぎてしまうと、プレッシャーになる恐れもあります。
上記でご紹介したように、一人ひとりの能力を見極めるのはもちろんですが、部下のライフスタイルや性格も見極めた上で、裏目に出ない程度の適度な期待をかけることが大切です。

まとめ
ピグマリオン効果は、新人の育成や部下の能力向上に役立つ教育心理学の1つですが、上手に活用することにより、部下からの信頼を勝ち取るコミュニケーション術としても有効です。
教育係として、新人を育成する上でも信頼関係は非常に重要となってくるので、ぜひ上記でご紹介した具体的な方法を参考にしてみてください。
なお、ピグマリオン効果はむやみに使っていると失敗する恐れもあります。
適度に活用するのが成功の秘訣であることを、覚えておいてくださいね。