心理学は、人間の深層心理に深い関わりを持つ心と行動の学問です。
日ごろから上手に取り入れることで、円滑な人間関係の構築はもちろん、あらゆる場面で役立ちます。
- 同僚と人間関係を上手に築くことができない
- 上司や部下とうまくいかない
- ビジネスで失敗ばかりしている
このように悩んでいる人は、心理学を学ぶことで、生活が一変するかもしれません。
そこで今回は、ビジネスと心理学の関連性、さらに即実践できるビジネス心理学の種類を、ご紹介します。

ビジネスと心理学の関連性
ビジネスを成功させる上で、とても重要となってくるのが、人間の心理と行動を把握することです。
例えば、「行列ができる店はどこが違うのか―飲食店の心理学」の筆者である大久保一彦さんは、「とんかつ新宿さぼてん」の店舗拡大に貢献した後、飲食店心理学を活用して、数々の経営不振に悩む飲食店を成功へ導いてきました。
無意識に働く人間の行動をしっかりと把握し、相手を上手に誘導するテクニックを用いることで、不振店を繁盛店に導いたり、上司や部下を上手にコントロールしたりできようになります。
人間の心理と行動を把握して動く心理学は、ビジネスを成功に導く上で、必要不可欠なツールの1つだといえるでしょう。
ビジネスで活用できる心理学の種類
ではさっそく、実際にビジネスで活用できる心理学の種類についてご紹介していきます。
今回注目したビジネス心理学は、次の3つです。
両面提示の法則
両面提示の法則は、自分が最もアピールしたいメリットだけではなく、不利となるデメリットも同時に伝えることで、相手との信頼関係を築くビジネス心理学です。
例えば、自分が営業マンで自社の商品をお客さんに対してアピールしたい場合、他社商品より優れているメリットと、やや劣るデメリットを同時に伝えます。
メリットのみを伝えられれば、「裏があるのでは?」といった不信感を抱く場合もありますが、デメリットも正直に伝えることで、「正直な人だから信頼できる」といった好印象を持たせることが可能です。
ただし、両面提示の法則を活用する場合には、メリットとデメリットの比率をしっかりと考えなければいけません。
正直に、5 : 5の比率でメリットとデメリットを話してしまうと、自分が思う方向に相手を誘導するのが難しくなります。
メリットが7割、デメリットが3割といった比率でうまく調整し、メリットを印象づける形で、相手の信頼と好感を得るのが望ましいでしょう。
フットインザドア
フットインザドアは、ビジネス心理学としても幅広く活用されている「段階的要請法」になります。
人は、いきなり大きな要求をされても即座に承諾するのは難しい傾向があります。
一方、フットインザドアの法則を使って、小さな要求から大きな要求へと段階的に移れば、断るといった選択肢に矛盾を感じ、承諾してもらえる可能性がぐんと高くなるのです。
わかりやすい例を出すのなら、スーパーの試食は、まさにこの心理学が当てはまるでしょう。
買い物をしているお客さんに対し、「試食だけでもいかがでしょうか」と、食品を食べさせたり飲ませたりした後に、「良かったらお一ついかがですか」と勧めます。
すると、「試食だけ」といった相手の欲求を承諾したこともあり、断りにくい心理が働いて、最初から商品を購入してくださいと勧められるよりも、はるかに購入してもらえる確率が高くなるんですね。
ちなみにフットインザドアは、ビジネス心理学以外にも、活用することができます。
誰かに何かを頼みたいときには、ぜひ活用してみてください。
ドアインザフェイス
ドアインザフェイスは、上記でご紹介したフットインザドアとは真逆のビジネス心理学で、本命の要求を通すために、まずは相手に対して過大な要求を行います。
例えば、クライアントとの価格交渉を行う際に、商品を1個あたり500円で販売したいと考えている場合、あえて最初に1,000円を提示します。
すると、相手からは「高い」「無理だ」といった返答が返ってくるのが当然です。
そこで、段階的に値段を引き下げていき、相手が断りにくい状況を作った上で、本命となる500円を提示すると、要求が通りやすくなります。
ドアインザフェイスは、相手に対して「何度も断るのは申し訳ない」といった心理と、「譲歩してもらったからお返しをする」といった返報性の心理が働く、巧妙なビジネス心理学です。

まとめ
ビジネス心理学は、ビジネスを成功させる上で必要となるツールの1つですが、信頼関係を築いたり、良好な人間関係を構築したりする際に役立ちます。
上司や部下と、円滑な人間関係を作り上げるためのコミュニケーションツールとして、大いに役立ってくれるでしょう。
社内での人間関係に悩まされている人や、仕事がうまくいかないとお考えの人は、ぜひこの機会に実践してみてください。
ただし、自分の立場を優位にすることばかりを意識するとうまくいきません。
「要求を通す」「信頼を得る」といった目的を達成することに集中しすぎると、相手に不快な思いをさせてしまうこともあります。
誘導するテクニックばかりに執着せず、思いやりや気遣いの心を忘れないようにしましょう。